ありませーん
■「ふれあいアート」 県ボランティア協会主催
平成26年11月12日(水)実施
(平成26年度 第三回 通算7回目)
幼児期に多様な存在理解を促す意味を下敷きに、アートを媒介に、幼児と障がい
ある人が交わる機会を設け、アートの持つ力を探る企画。
→11/12(水) この日は、西都の保育園にて実施。
この日の主催側の参加者は、公立大の教授でボランティア協会会長の辻さん、公
立大学生3名、電動車椅子3人衆の光代さん・靖治さん・祥吾さん、心ほぐれる
陶芸実践の瀬尾さん、書を柱に据える生駒の9名。
朝、9時、園舎のホールに入り、ブルーシートを全面に敷く。しばらくして、車
いすの三人、光代さん、靖治さん、祥吾さんが到着すると、園庭で遊んでいた園
児達がわっと車いすをそれぞれに囲み3にん共に立ち往生となり、楽しい出迎え
を受ける。
分校跡という、保育園は園庭が広く、園舎に届く日差しもいっぱいで明るい雰囲気。
準備の最中から、年少から年長までの園児が、なんだなんだと覗きに来る。
こちらも、たまらず話しかけたり、抱っこをしたり、お互いに待ち遠しい準備の
時間。
子ども達の目には車いすと、車いすに乗る人それぞれに関心が注がれ、始まりの
時を静かに待っていた。
今回、参加の年長児さん12名は、相当わんぱくと聞いていたのでどうなるか楽
しみであった。
先生から、「すみません、この子たちも少し見学をさせてください」と年中らし
き園児さんが年長さんの後ろにキョロキョロした目で着席。自己紹介で靖治さ
ん、祥吾さんの話し方に自然と笑いを起こす園児、静止する園児。さーいよい
よ、始まり。
妖怪ウオッチのシールを胸元に付けた瀬尾さんの進行で開始。
最初に辻会長の挨拶「みなさん、元気ですかー。今日は、みなさんと沢山遊ぶ為
に、劇を観たり、習字のようことをしたりします。元気よく遊びましょう」
つづいて、園長先生のご挨拶「もー、待ちにまったこの日です、園児と今日来て
いただいた皆さんと楽しい時間になること、わくわくしています。」
挨拶等後、プログラムに入る前に、気持ちをほぐす導入を行う。瀬尾さんが、
「みなさんお隣の人の手を握ってー、力を伝え合いましょうー」の声掛けに、
12名の園児は手をつなぐ。
間に入った、車いすの光代さん、靖治さん、祥吾さんにも手を擦り擦りする園
児。靖治さんの顔を触ったり、頬ずりする子どももには、驚きが起きた。
力を伝え合って、プログラムに。
体験の進行には、生駒が当たらせて戴く。
最初は、みやざき◎まあるい劇場の主宰の祥吾さん。
今年、こふく劇場の永山監督の演出で鳥取と広島で公演された「青空カラー」の
ワンシーンを公立大の雄佑さんを相手に一部を演技披露。
園児達は分かりづらい点もありながらもジーっと見入っていた。
演劇後、質問を問うと「ありませーん」と控えめに口をそろえて。幾つか祥吾さ
んに主催より質問をぶつけ、彼のことを園児にお伝えする。このやりとりで、祥
吾さんの答えを聞き手が復唱する普段のやりとりを意識して行い、園児に分かる
ことを努めた。
祥吾さんの演技の後では、文字(絵)当てゲーム。
小学1年生で教わる漢字に絵を付けた模造紙を展示。それをみて、まず、靖治さ
んが2つ身体を使って文字(絵)を表現。「ぶたー」「さるー」と掲示されてい
ない文字(絵)を言う子ども達がいたり、最初はやや考える場面もあったが、慣
れてくると「ひー、ひー(火)」と「あめー(雨)」と靖治さんの力を振るった
身体表現を当ててくれた。靖治さんの後は、雄佑さんが照れながら一問、そし
て、園児達に2名やっていただく。2名とも要領が若干わかりずらかったか、雄
佑さんと同じ「月」を連発。
それはそれで、文字を身体で表現することの一つの試みは行えた。
文字当て後は、いよいよ筆を執っての体験。
2箇所に別れ、3メートル近い紙を用意して一本線を。
最初に光代さんと靖治さんがデモを披露、2本の力強い線を静かに見終わった園
児達が、交替で紙の上にまたがったり、横に立ったりして一気に一本線を引き上
げる。入筆が強いものあれば、優しい物、終筆では画面を走り去っているもの、
寸前で優しく終えているもの、いろんな表情の線が現れた。紙を出したり、引き
上げたりで予定よりは時間はかかったが、園児の人柄そのままが映しだされた一
本道が12本並んだ。
麺のような様が揃ったあとはしばし休憩。
15分ほど休憩を開けてからは、靖治さんの揮毫。
園児たちが持ったこともないような大きな筆と全紙(135センチ☓70セン
チ)に2文字。
練習の段階から園児たちは接近して靖治さんの一挙手に声援を送りながら注目。
いざ、筆を持ち墨を付け書き進むと園児はさらに前のめりに。と、靖治さんの筆
が止まる。文字を書き間違えた、瞬時にもう一枚ということで、紙を変え再挑
戦。ぎゅっ、ずしんずしん、ずずずずー。意に反して緊張する身体に制御をつけ
ながら動く筆。園児たちは、描かれる線を追いながら「山?」「木?」などと声
をだす。書き上げた3文字。「出来る」。
書き終えた靖治さんに問うと、「今は、できないことでも大きくなると出来るよ
うになるから頑張ってください。」
黙って聞き入った園児達。「何か靖治さんに聞きたいことありませんかー」と聞
くと、あっけにとられたのか先の祥吾さん同様「ありません」と。
主宰者側から靖治さんに幾つか質問を行う。じっと聞く園児たち。
集中して見た後は、4人づつに別れて70センチ☓70センチの紙に 「◯」を目
隠しして書く流れに。
最初に祥吾さんが筆を持ち目隠しでしゅっと。大きく点々がほどよくついた円が。
それをみた園児たちが代わりばんこに目隠しをして筆をもつ。目隠しをしたお友
達の介助を待っている仲間の園児が手伝い。控えめながらも堂々とした円、大き
な大きなお月さまのような円、空間に語りかけるような円、どっしりと太い線の
円。様々な顔が飛び出して、園児の一人ひとりがそのまま現れているようなもの
が次々に。
最後は、五メートルについだ紙にみんなで一本の線を。
園児、園の先生、主催者、総勢20名がぐるりを囲み、大きな筆にたっぷり墨を
含ませて筆をバトンタッチしながら線を引く。出だしの大学生の変化に飛んだ線
が、その後の園児達に刺激を与え、ジグザク、ぐるぐる、ジュジュジュ。墨の飛
び散る歩みあり、かすれをゆっくり進む歩調あり、みんなで線の行方を追う。最
終の筆が靖治さんに渡ると気合の一筆、ぐぐぐー。思わず身体が前に倒れ、線の
上に顔が落ちた。靖治さんの顔についた墨を拭き取ろうと側にいた園児がすぐに
拭きとってくれた。
個々に持つエネルギーがこの場に介して、スパークした。
最後は、描き上げた作品が天上から吊るされている中、みんなで記念撮影をして
終えた。
園の先生からは、「園児の思わぬ顔を観ました」 「日頃の保育の在り方を振り
返りました」
「この企画ならではの引き出す力感じました」。
脱力感に襲われるほどの放出現場だった。
最後現場を後にするときには園児達が出てきてお見送りをしてくださった。
改めて、園児たちだけでなく、主催者にも、みんなのハートに種まきをする、そ
んな企画とつくづく感じるものであった。