おひさまプロジェクトa.k.a.アザミ姫
梅子さんは興に乗ってきたと見え、シコをふんぢゃった。土曜日の午後、地域コンサート5月開催がおぼろげながらも見えてきた有料老人ホームおひさまにおいとまするタイミング。五嶌さんには納宏子さん紹介でぎっくり腰を診てもらった恩もあるが、現在は三ヶ所の介護サービスを手がけておられる。その場を地域密着型展開として、利用者の納さんが面目躍如で仕掛けを投げ会談はよいスタートをきった。
そもそも、一昨年の退院を機に病院主催で話し合いが持たれたとき、当事者の主張をバックアップするため五嶌さんと私も地域自立生活の応援者として顔をそろえて今がある。もはや介護保険制度の枠内での選択を余儀なくされ、あわや施設入所が先行し気色ばんだ空気も流れていた。40代後半からの家を開放し、自身で外出する力を得た納さんの存在アピールはわたぼうしコンサートをメインに失われた成長を一気に加速させ、ウサギに追いついた亀のように生活を展開して行った。そして多くの賛同者、後に続く自立生活者へ先行く仲間となった。
しかし、かってのようにはボランティアが寄ってはこない今と、老いへの階段が立ち塞がる現状に至っても、湧き上がる共生への欲求は枯れない。後見人制度で親身になる存在が増え、その彼女の趣味の楽器演奏を喜んだと同時に、施設改革案までも考え始めたのだった。
そこで毎週顔を合わせる利用者が梅子さん。うちとけるきっかけを互いに見計らうのか辰年の二人。他の男性らもサイモンとガーファンクルのブックエンドの歌詞のごとくポツンと座して日々を淡白に送る様子。その精神的沈黙空間を打ち破りたいとの秘策が納さんの頭脳では芽吹き、取り巻を動かし、気心の知れた経営者もけしかけ遂に決行日までが見えてきた。
思えば、いつもそうだった。激励しているつもりが知恵と勇気を吸収させてくれ、運び役のつもりが舞台の袖から役を果たせるまでに育てられた。今回も生死をかけるくらいのモチベーションが自然と移り、波及効果間違いなしのイベントへと力が集まりだした。一番ブレイクした還暦大パーティーから16年経った今年、相方の友井絹子さんが10年前に逝き、一周り若い菊永恵子さんが闘病の床にあるのに較べたら孤軍奮闘する姿は静かさと崇高さを増し続けている。改めて彼女の生き方にアザミ姫の冠を捧げる次第。